古代紫という色を知っていますか。澄んだ赤
みの紫です。英語ではロイヤルパープル(王者
の紫)といわれ、born in purple といえば「高
貴な家柄に生まれた」という意味です。昔は王
や最高位の僧侶と政治家にのみ着衣が許されて
いました。日本でも昔は天皇だけがこの色の衣
を召していた時代があります。高貴な色です。
この紫染料はアクキガイという10pほどの貝
12,000個からわずか1.5gだけ採れ、これを白
布につけて日光にさらすと、徐々に黄色から紫
紅色に染まります。だから大変高価だったわけ
です。衣ひとつが何百万円もしたことでしょう。
使徒や庶民が(無染色の)白服ばかりというのも
納得いきます。
エジプトの女王クレオパトラ7世の旗艦の帆
がこの紫で染められていたという話は有名です。
映画 「ベンハー」 白服(無染色)と支配者の紫の衣
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イエスが十字架刑の判決を受けた場面に紫の
衣が出てきます。「イエスに紫の衣を着せ、い
ばらの冠を編んでかぶらせ------葦の棒でその
頭をたたき、つばきをかけ------こうして、イ
エスを嘲笑した挙句、紫の衣をはぎとり、元の
衣を着せた。それから彼らはイエスを十字架に
かけるために引き出した」(マルコ15・16-20)
ところがマタイ福音書ではこれが「赤い外套」
となっています。「その上着を脱がせて、赤い
外套を着せ、またいばらで冠を編んでその頭に
かぶらせ----」(マタイ27・28-29)
ふたつの記述は「色」が違っています。
キリストには紫の高貴の衣がふさわしいので
すが、「罪人」とされた者が紫の衣を着ること
は実際にはできなかったはずです。仮にそうだ
ったとしても、それを着たものを嘲ったりつば
きをかけたりする行為はありえないことです。
イエスは赤い衣を着せられていたのでしょう。
紫のことからこんな聖書の見方ができます。
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